【平成28年・山岳10ニュース】 順序不同

◆積丹岳遭難死・道警の過失確定

11/29積丹岳で2009年2月に遭難死した札幌市の会社員・藤原さん当時38歳の両親が道警の救助に過失があったとして道に慰謝料等計約8600万円の支払いを求めた訴訟で最高裁は道の上告を退ける。道警山岳遭難救助隊の過失を認め約1800万円の支払いを命じた。藤原さんは2009年1月31日スノーボードをしに入山し遭難。救助隊は翌日発見したが両脇を抱えて歩く際に雪庇を踏み抜き滑落。救助用のそりに乗せて急斜面を引き上げ疲労が激しい隊員を交代させるなどのため、そりを一時的にひもでハイマツに結び付けた際そりが滑落。藤原さんは翌日発見され凍死と確認。2012年11月の一審札幌地裁判決は、救助隊員が雪庇を踏み抜いたことを過失と認め、道に約1200万円の支払いを命じた。2015年3月の二審判決は、そりを固定した際に抜けやすい結び方だった点などに過失があったと判断。藤原さんも悪天候になると知りながら不十分な装備で登山を続けたと指摘。藤原さんの親は、「息子の無念、晴れることはない。道警は決定を受け止め道民の信頼に応えられる頼もしい救助隊に生まれ変わってほしい」とコメント。道警は「結果的に生存救助できませんでしたが、隊員は過酷な気象状況の中、自身も滑落し、命の危険にさらされながら活動を行ったもの」とコメント。

山のトイレを考える会・活動評価で各種受賞

日本山岳遺産基金は日本山岳遺産に美瑛富士を認定し、長年、美瑛富士で環境保全活動に取り組んできた「山のトイレを考える会」に助成金が贈呈。同会は平成29年2月に東京都で開かれる「日本山岳遺産サミット」で、これまでの取り組みを報告。山のトイレを考える会は2000年に登山愛好者ら数人で発足。美瑛富士の避難小屋へのトイレ設置を目指し、マナーガイドやトイレマップを作製・配布するなどの活動が評価。また環境省北海道地方環境事務所の推薦により当会が「第34回前田一歩園賞」を受賞。「第6回北海道新聞エコ大賞」で大賞を受賞。

◆八剣山で相次いで滑落死

5/22八剣山の山頂付近で、札幌市の沢橋さん(59)が足を滑らせ、30m下の斜面に滑落。頭などを強く打ち死亡。沢橋さんは妻と2人で登山に来ていた。登頂後、写真を撮影するため、1人で山頂の看板の周辺を歩いていた際、足を滑らせた。

9/27八剣山の山頂付近で、札幌市の工藤さん(64)が下山中、70m下の斜面に滑落。頭などを強く打ち、搬送先で死亡が確認。工藤さんが足を滑らせた。

◆白老岳遭難事故で注意喚起・短時間低体温症死

3/10白老岳で千歳市の男性会社員(65)が遭難死亡。発見まで約5時間と短時間でも低体温症で命が奪われた事故。登山関係者は「動いている時の防寒と、動けなくなった時の防寒は別物」とコメント。白老岳を1人で登っていた男性本人から「滑落して足を負傷した」と通報があったのは3/10午後5:20。約5時間後に、道警山岳遭難救助隊が山頂付近で意識不明の男性を発見収容。病院で死亡が確認。死因は低体温症。

十勝岳避難用シェエルター完成

10/19十勝岳噴火に備え中腹の望岳台に建設を進めていた避難用シェルターが完成。道内自治体による防災シェルター整備は初。総工費約4億円。火口監視や天気予報の情報モニターを備え登山情報も発信。シェルターは火口群から約3キロ北西の登山道入り口に建設。非常時は100人収容。屋根や壁の厚さは20センチ以上あり、噴火の際に火口からの噴石を防ぐことが可能。

山岳遭難件数過去最悪・登山届け未提出8割

道内の今年の山岳遭難件数が9月末時点で107件と昨年1年間の100件を上回り、統計を取り始めた1968年以降で過去最悪を更新。山岳会や警察署などへの登山計画書が未提出だったのが、全体の8割を占めた。

相次ぐ台風で登山道や山岳関係宿泊地災難

台風10号の影響で登山口に通じる各地域での林道等が決壊し通行止め相次ぐ。8/30から休業していた「トムラウシ温泉国民宿舎東大雪荘」は10/1に営業再開。今年は、林道の土砂崩れ、倒木などで登山に影響出る山岳地域も多くあった。復旧時期は未定のところもあるので、状況については北海道森林管理局などのHPで確認必要。

増毛山道完成

10/16江戸末期に開かれた増毛山道(留萌管内増毛町別苅―石狩市浜益区幌間、27㎞)の再生作業が完了、約160年前に開かれた山道が蘇った。増毛山道は北方警備に当たる兵員の輸送路として開削。明治期には貴重な陸路として活用されたが、昭和20年代には往来が途絶え、草木が生い茂って通行不能に。山道には、かつて1級国道だったことを証明する1等水準点の標石や、郵便物の中継に使われた武好駅逓跡などがある。

田部井淳子さん逝去

10/20腹膜がんで亡くなった登山家の田部井淳子さん(享年77歳)。で道内の女性登山家や親交のあった関係者からも惜しむ声。田部井さんは山の環境保護に取り組むNPO法人「日本ヒマラヤン・アドベンチャー・トラスト」の代表を務めたことがあり、空沼岳や旭岳など道内の清掃登山にも参加していた。

函館市在住の坂口さん道内など山の紀行文を精力的に執筆

函館在住の登山愛好家・坂口さん(72)が道内の山の魅力を綴る「ほっかいどう山楽紀行」のほかに、道南と東北の山々の魅力を紹介する連載「どうなん・とうほく山楽紀行」を新設。道内などの山の紀行文を精力的に山岳誌や新聞紙面等に執筆している。「ほっかいどう山楽紀行(2012年6月から)」は北海道新聞札幌圏版で隔週連載中、「どうなん・とうほく山楽紀行(2016年11月から)」は、北海道新聞夕刊地域情報版「みなみ風」で隔週連載中。坂口氏からのHP等からも閲覧することができる。

【その他、気になったニュース】

大和君発見・水だけで過ごす

5/28から七飯町の林道で行方不明の北斗市の田野岡大和くん当時7歳が6/3日朝に鹿部町の陸上自衛隊駒ケ岳演習場内で陸自隊員が雨宿り小屋で保護。大和君は「一人で山の中を歩いて来た」「28日夜から演習場にいた。水を飲んで過ごした」とコメント。水やマットレスなど設備をうまく使って悪天候や寒さをしのぎながら救助を待ち続けた。「保温と動かないという遭難時の鉄則を身につけていた。7歳で実践するとは大したものだ」「幼いのに、むやみに動き回らず、建物にとどまったのは本当に良かった。水だけなら7日をしのぐのがやっと。建物の外にあった蛇口から水を飲んでいたので、ギリギリの無事な発見」「水を得られ風をしのげたことが大きかった。小さい子がよく耐えた」と捜索関係者はコメント。

◆山の日道内各地で催し

今年から8月11日が国民の祝日「山の日」になるのを記念して、道内の山岳地等ではの登山者らで賑わった。

◆北海道新幹線開業で道外登山者さらに身近に

道南の登山コースをまとめた「北海道夏山ガイド5巻道南・夕張の山々」が5年ぶりに改訂。今年3月に北海道新幹線が開業し、道外から大千軒岳や駒ヶ岳、恵山などを巡る登る登山者も増えた。「新幹線開業で北海道の山がぐっと身近になった。日帰りも可能な山もあるので毎年行きたい」と東北からの登山者らはコメント。

恵庭岳滑落死

9/24恵庭岳の中腹付近の崖下で、女性の遺体を登山中の千歳署員が見つけた。恵庭岳では7/16江別市の仲野さん当時42歳が登山中に行方不明になっていた。

利尻山・低体温症で死亡

4/6利尻山で北大生の男性2人が遭難し、札幌市の斉藤さん(28)が死亡。強風の中、山頂付近で低体温症とみられる症状で動けなくなったことが原因。2人は北大医学部の6年生。登山計画書を提出している。

小化雲岳で登山道を外れ転落

8/3小化雲岳で登山道から離れた崖下で男性が倒れているのを発見。北九州市の大学生・上田さん(27)が登山道を外れ転落。上田さんはワンダーフォーゲル部所属、他の部員3人と7/27に旭岳から入山。大雪山系を縦走中、8/1になって遅れだし3人が先に下山した後、行方が分からなくなっていた。

海別岳・低体温症で死亡

3/21海別岳で山スキーの網走市の大学生・内山さん(21)が悪天候のためビバーク中、意識不明。内山さんを650mの北側斜面で発見、死亡が確認。内山さんは登山仲間の会社員男性2人と入山。途中で吹雪に遭って身動きが取れなくなり保温シートでビバーク。登山仲間のうち1人は、はぐれて先に下山。もう1人は一緒にビバークした内山さんの異変に気づいた後、救助を呼ぶため自力で下山。

幌尻岳で滑落死

8/4幌尻岳で登山道から沢に滑落。道防災航空隊のヘリが標高約1000m地点で男性を発見、収容したが死亡。男性は釧路市など高齢者5人グループの1人。

3月、後志管内で遭難事故相次ぐ

3/13余市岳山頂付近から札幌市の無職男性(74)と妻(59)の2人が携帯電話で救助を求め約4時間後に道警の山岳遭難救助隊に助けられた。3/10には赤井川村と小樽市天神の境界の山中で、同市内の70代の男性2人が道に迷い、通報から約4時間半後に同救助隊に救助。市水道局浄水センターから約4キロの松倉岩を目指したが帰り道がわからなくなったとのこと。食料はほとんど持たず、衣服は登山用の装備ではなかった。

旭岳単独入山行方不明

10/23旭岳で単独で入山した仙台市の男性(53)が、標高1600mにあるロープウエー姿見駅を降りたのを最後に行方不明。男性は登山口の入山者名簿に名前と旭岳に登ることは記していたが詳しい行程や緊急時の連絡先は書かず計画書も提出していない。

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